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ソフトウェアと本の覚え書き

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2013-01-19 [長年日記]

_ [映画] 『地球が静止する日』

おすすめ度:★★★☆☆

地球が静止する日

_ [映画] 『センターステージ』

おすすめ度:★★★☆☆

センターステージ

_ [読書] 児玉真実『アシュリー事件』

重度の障害をもつアシュリーという女児に、エストロゲン大量投与による最終身長の制限、子宮摘出、"乳房芽" の摘出による成長抑制療法を行った問題やその論争について書かれている。アシュリーに関する具体的な問題にとどまらず、話題や議論はより広い範囲につながっていてとても勉強になった。

アシュリーに対する成長抑制療法に関しては、病院の倫理委員会がきちんと機能していない、実施した医師の説明責任に果たしていない(そもそも、説明責任を果たせるような検討がされていない?)、アシュリーの父親に関する疑問、子宮摘出の違法性について、など具体的に問題点が指摘されている。私のまったくの想像としては、革新的な手法を開発したいという医師の功名心や障害者である娘が性的な存在になってほしくないという親のグロテスクな欲望などを考えていた。しかし、読み進めていくと、アシュリーのケースの検討から他の障害者の救命、延命に関する問題に触れられていき、私が考えていた個々人の利害というよりも成長抑制療法が許容される社会的な流れも浮かび上がってくる。

その一つは "無益な治療" という考え方で、救命できる可能性がある場合でも医師が QOL (Quality of life) が低く、その努力に見合わないと判断したら治療を拒否できるというものだ。QOL を判断するのはその病気の本人であり、価値判断を含むことだから本人以外には不可能だと思っていたのだが、QOL という考え方を使って治療を拒否するという考え方が出てくるとは。本書では深くは触れられていないが、もうひとつ恐怖を感じたのは、脳死は人の死であることが医学的に間違っていることを認めた上で、現在でも移植が行われているのだから、脳死以外の植物状態になったときにも臓器移植を認めるべきだという意見があるらしい。脳死移植に反対の根拠の一つとしては脳死は人の死ではないという考え方だと思うのだが、移植が普及すると逆に臓器提供者の範囲を広げる理由とするとは。論争があっても一般に普及させることで実績を作り、それが解禁を進めるということなのだろうか。

本書の最後に、障害をもつ子どもの母親として、アシュリー事件を考えていく上で引き裂かれていった著者の思いが述べられている。愛情による美化が障害をもつ子どもの介護について親を追いつめる、障害者本人やその親に必要なのは彼らを孤立させないような社会的なサポート、福祉の充実である、という非当事者としては気づきにくい部分であるが、著者の経験に基づいた主張には考えさせられる。

おすすめ度:★★★★★

アシュリー事件